めじろそらクリニックのblog

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カテゴリ: 読書日記

「これが体にいい」とか
「こうすればメンタルが強くなる」とか
言い切られてしまうと、眉唾に感じてしまう。

過ぎたるは猶及ばざるがごとし
薬も過ぎれば毒となる

昔の人はよく言ったものです。



なんだかしんどいな、という時は、
どこかに力が入り過ぎてないでしょうか。

仕事のことで頭がいっぱいになっていたり、
気がつくとニュースのことばかり気にしていたり。



最近、頭の中が考えていることで
あふれそうになっていた私。
久しぶりに手に取った本がこちら↓


ずっとやりたかったことを、やりなさい。
ジュリア・キャメロン
サンマーク出版
2012-11-05



もう何年も前に買った本の帯には、
「毎日の繰り返しに、埋もれた自分。
そろそろ起こしてみませんか?」とあります。

自分自身、アーティストとして活躍しながら、
創造性を育むためのワークショップを運営する
ジュリア・キャメロン。

彼女が、その豊富な体験をもとに、
誰もが創造性を発揮できるよう
手ほどきしたのが本書です。


創造性を育むために、
キャメロンが推奨しているのが、


モーニング・ページ


毎朝、手書きで
心に浮かんでくることをそのまま書き連ねること


書きたくても、書きたくなくても、
とりあえず、手を動かす。
自分の弱音、怒り、楽しみ、喜び
なんでも書き出して、書いたものは見返さない。
 
キャメロンは、この行為を
「脳の排水」と呼んでいます。


どうやら、私も
頭の中でああでもない、こうでもない、
と思いあぐねることに少し疲れてるのかもしれません。



誰に気兼ねすることもなく、
とにかく書き出す、そして放っておく。


しばらくモーニング・ページを実践してみます。

過日、箱根に行ってきた時のこと。
いかにも歴史のありそうな、
日本家屋の旅館に泊まりました。

宿を入ると、チェックインはこちらです、
と案内されたのが、サロン風の部屋。

その部屋の一隅に、
新聞やガイドブックに混じって、
一冊の文庫本が置いてありました。

その本が
「帰れなかったドイツ兵」

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なんと、100人余りのドイツ海軍将兵が、
第二次世界大戦中、この旅館で過ごしていたというのです。

彼らが乗っていたドイツ巡洋艦が
横浜港係留中に爆発したため、
帰国ができなくなってしまったのでした。

火の上がった船から、
すんでのところで海に飛び込み、岸まで泳いで
九死に一生を得たドイツ兵たち。

最初はほんのひと時の船待ちのつもりで、
箱根の旅館に落ち着いたはずが、
その後、4年もの長きにわたって、
同地に留まることになったのでした。

ドイツ兵たちは、
日本海軍省のお客様という立場だったので、
自由な生活を保障されていたようです。

衣食住も平凡な暮らしも保障されていましたが、
彼らをいら立たせたのは、
「先行きの見えない幽閉生活」でした。

自由な生活とは言え、行動範囲は
宮ノ下までに限られており、
それより遠方に行くときは、
許可証が必要だったのです。



さて。

軍の若者たちにとって、
この生活が次第に堪え難いものと
なってきたことを
ドイツ海軍のブルーンズ大尉は、
気づいていました。

そこで、懇意にしていた旅館の息子に
こう相談します。

「何かこの村の人々に役立つ仕事はないだろうか。
やりがいのある仕事を彼らに与えたいのだ」

そして、できたのが「阿字ヶ池」
ドイツ兵たちが、村の人々のために
防火用水を兼ねてつくった池です。

ドイツ兵たちは、
実に科学的、計画的、理論的に作業をこなし、
本格的な池を造成しています。

この池は、今も立派に水を湛えているとのこと。



本には池を作っていた時の写真が載っています。
上半身裸になって、手にスコップを持つドイツ兵たち。
心から愉快そうにこちらを見ています。


「人の役に立つこと」
「目的を持つこと」
それが、どれだけ人を生かすのか


そんなことを思わずにはいられませんでした。

「コロナ後にやりたいリスト」
なんていうのを作ってます。

その一つが、お勧めの本を
待合室の本棚に並べること。

今まで雑誌や資料などを置いていた棚ですが、
感染防止のために今は空の状態です。

感染を気にせず本を置ける日が来たら
この本を置こうかな、あの本を置こうかな
と考えてます。

たぶん、そのうちの一つになるのがコレ。

[スティーヴン・ガイズ, 田口 未和]の小さな習慣 

「小さな習慣」 スティーブン・ガイズ著
なんと、ダイエットもウソみたいに続けられる!
ですよ!?(この文言だけで、買ってしまいそうです)

今までの人生で、
これをがんばる!と
意気揚々と計画したのに
いつのまにか挫折してしまった…ということはありませんか?
(私はあります)

著者のガイズさんは、こう言っています。

習慣は小さければ小さいほどいい
なんなら、それをしないことがむしろ難しいほど簡単なもの

一つの小さな習慣を続けることが
次の変化を引き起こし、
ドミノ現象のごとく
その後の人生を変えていく。

これを著者自身の経験をもとに
ていねいに説明してくれてます。

大事なのは、
最初から人生を変えるような変革を期待するのではなく
まずは
小さな習慣を始めてみること



私が今やっている「小さな習慣」はこんなことです。
1)なんでもいいから1日3行書く
2)スクワット5回
3)DSM5(診断基準)関連の原著を1日1ページ読む

…小さいですね。ほんと。

意外と3)が続いてます。
文庫本サイズの小さな本なので、
1ページなら、あっという間なのです。



「小さな習慣」、気になったら手に取ってみてくださいね。
 

子供の頃から本が大好きでした。

と言っても、
文学集を隅から隅まで読んだとか、
この作家の本なら何度も繰り返し読んだとか、
そんな熱狂的な読み手ではなかったと思います。

本に囲まれていれば、ワクワクする。
あれを読もうか、これを読もうか、
迷うことからして楽しい。
そんな子供でした。

今も、出かける時は
いつもバッグに本を入れていきます。
ないと落ち着きません。

職業と、自分の興味のど真ん中が
重なっているので、
専門分野の本を読んでいることが多いのですが、
少し行き詰まっているかも?と感じたら、
全く関係ない本を手に取ります。

すると、本が思いがけない言葉を
プレゼントしてくれることがあるのです。

「日日是好日」森下典子著
樹木希林さんが出演されている、最後の映画の原作です。

「雨の日は、雨を聴くこと」という章では、
ある滝のように雨が降る日の午後、
お茶のお稽古に臨んでいた時の体験が綴られています。

その中の一節が、私の心に沁み入るように響きました。
今日、もしかしたら私と似たような気分でいる貴方にも届きますように。 

==== 『日日是好日』より ====

こんなふうに一心に雨を聴いたことはなかった。
雨音の密林の奥深く、分け入っていくような気がした。
ドキドキする。
生々しくて、なんだか恐ろしい。
だけど、もっと先へ分け入りたくなる。

<中略>

突如、だだっ広い場所に、私はいた。
ここはどこだろう?
私をさえぎるものは何もなかった。

手順を間違えてはならないという緊張も、
抱え込んだままで常に気にかかっている仕事も、
今日帰ったらしなければいけない用事も、何もなかった。

自分はもっと頑張らなくてはダメだという思いも、
他人から好かれ評価されなければ
自分は無価値なのではないかという不安も、
人に弱みを見られたくないという恐怖感も、
消えていた。

とてつもなく自由だった。
生暖かい大粒の雨を、
肌に痛いほど激しく浴びているかのようだ。
嬉しくて楽しくて、子供のように歓声を上げながら、
目も開けられないほどのどしゃぶりの雨に洗われているみたいだ。
こんな自由、今まで知らない。

 どこまで遠くへ行っても、そこは広がった自分の裾野だった。
 ずーっとここにいたし、どこかにいく必要もなかった。
 してはいけないことなど、何もない。
 しなければいけないことも、何もない。
 足りないものなど、何もない。
 私はただ、いるということだけで、百パーセントを満たしていた。

PB061460




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