誰にも知られたくない秘密は守ってもらえるの?
臨床心理士・公認心理師の澤地です。
カウンセリングを受けてみたいと思ったのに、
きちんと秘密は守られるのか、
不安になってやめてしまったことはありませんか?
倫理的に、というだけではなく、実は公的にも
<カウンセリングで知り得た情報を外部に漏らしてはいけない>という
守秘義務が、カウンセラーには課されています。
臨床心理士になるには、
財団法人日本臨床心理士資格認定協会の試験に合格する必要がありますが、
この協会の倫理綱領には、〈秘密保持〉第3条として、次のように記載されています。
「臨床業務従事中に知り得た事項に関しては、
専門家としての判断のもとに必要と認めた以外の内容を他に漏らしてはならない」
また、2018年から国家資格となった公認心理師においては、
公認心理師法、第四十一条(秘密保持義務)で、
「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。
公認心理師でなくなった後においても、同様とする」
と規定されています。
さらに、この秘密保持義務に違反した場合は、
「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられると同時に、
公認心理師としての登録が取り消されることがある」
という、厳しい罰則も設けられているのです。
アメリカのTVドラマ『In Treatment』 のワンシーン
ところで、臨床心理士や公認心理師に課せられた守秘義務には例外があります。
これらの条文の
「専門家としての判断のもとに必要と認めた以外の内容」とか
「正当な理由がなく」といった表現は、
患者さんの秘密が漏らされる、あるいは開示される状況があることを示唆しています。
一般的には下記のような状況が考えられています。
① 自殺企図や自殺の可能性が高い場合。
② 患者さんが、子どもや老人など、自分より弱い立場の人間を虐待したりしている場合。
③ 殺人など暴力的犯罪の危険性が高い場合。
上記のような例外的状況においても、
事前になぜ秘密を開示するかを患者さんに説明し、
それについて患者さんと話し合うことが、カウンセラーの基本的姿勢となっています。
---------------------------------------------------------
参考文献:
金沢吉展『臨床心理学の倫理をまなぶ』東京大学出版会、2006
佐藤進監修、津川律子他編『心の専門家が出会う法律―臨床実践のために【第3版】』誠信書房、2009
村上宣寛他『改訂 臨床心理アセスメントハンドブック』北大路書房、2008